満開の桜の下で息の合った奴踊りを披露する地元の男性たち=2025年4月11日午前10時47分、奈良県吉野町吉野山、大野博撮影

 ご神木とされる吉野山のヤマザクラの満開を本尊の蔵王権現に報告する「花供懺法会(はなくせんぽうえ)」が11、12両日、奈良県吉野町の金峯山寺蔵王堂で営まれた。

 最大の見せ場は「大名行列」。地元の男性が扮する「奴(やっこ)」のほか、鬼も加わるというユニークな構成だ。2月の金峯山寺の節分会では「福は内、鬼も内」と唱え、全国から追われてきた鬼を迎え入れる。修験道と金峯山寺の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が鬼に仏法を説いて弟子にしたという言い伝えに基づく。

 山伏装束姿の僧侶が吹く法螺(ほら)の音が響く中、息の合ったユーモラスな「奴踊り」や、愛嬌(あいきょう)を振りまく赤、緑、黒の3体の鬼に、沿道の参拝者や観光客から惜しみない拍手が送られた。

 吉野山の桜は日本古来のヤマザクラを中心に、200種3万本といわれる。役行者は吉野の山中にこもり、修行の末に蔵王権現の姿を感得。それをヤマザクラの木に彫って金峯山寺の本尊としてまつったと伝わる。信者による桜の木の寄進が相次ぎ、手厚い保護もあって、古くから国内最大規模の桜の名所として知られる。

 吉野山観光協会によると、吉野山の桜は12日現在、下千本と中千本が散り始め、上千本が満開、奥千本は三分咲きという。

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