秋本風香さん(右)を激励するため、青森県田子町から駆けつけた中畑文利さん=2025年4月18日、岩手県二戸市浄法寺町、坂田達郎撮影

 岩手県二戸市浄法寺町の鍛冶(かじ)工房。4月18日、鉄製品をつくる鍛冶職人の中畑文利さん(82)が、隣接する青森県田子町から車いすでやって来た。

 「カン、キン、カン、キン」。漆の木に溝を掘り、樹液を採る漆かきに使うカンナをつくるため、秋本風香さん(27)が、高温で熱した鉄をハンマーでたたく。中畑さんがじっと見つめた。

漆かきの道具づくりをする秋本風香さん(右)を、(左から)鈴木康人さんと中畑文利さんが見つめた=2025年4月18日、岩手県二戸市浄法寺町、坂田達郎撮影

 「硬い手だったのに、ずいぶん軟らかくなりましたね」

 作業が一段落し、秋本さんが中畑さんの手を握った。「来られてよかったね」。鍛冶仕事を一緒にしてきた妻和子さん(71)が声をかけ、中畑さんの表情がほころぶ。

 漆かきの道具一式をつくれるのは長年、国内で中畑さんだけだった。

 秋本さんは、市が今春整備した鍛冶工房を拠点に、漆かき職人と、漆かきの道具をつくる鍛冶職人の両立をめざす。

この春完成した鍛冶工房=2025年4月18日、岩手県二戸市浄法寺町、坂田達郎撮影

 中畑さんは昨年11月に病で倒れた。この日は秋本さんを激励するため、約5カ月ぶりに病院以外での外出となった。

■漆の生産も職人も減少、道具…

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