人は悩んだ分だけ成長する。わかっていても、俳優でダンサーの大澄賢也さんの場合、自らの未熟と向き合う苦しみは、想像を絶していたかもしれません。でもダンスと歩む人生と決めていたから、頭を上げた。その象徴が、あの「憧れの人」がかぶっていた帽子でした。
指ではじけばカンと響く硬さ、心地よい重量感。老舗帽子メーカー、クリスティーズロンドンのボーラーハットはクラウン(山)の高さや幅感、ブリム(つば)の大きさに至るまで、僕にしっくりなじみます。ブロードウェーで活躍した振付師、ボブ・フォッシーがその独特なスタイルに用い、「いつか僕も」と思ってきた帽子。フォッシーは永遠の憧れでしたから。
子どものころから無理と言われると挑戦したくなる性分でした。高校も、受からないと言われた地元屈指の進学校に挑んで、合格。でも入学後は取り残された。医師だ弁護士だと将来を見据える級友たちの中、僕に目標はなかったので。
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