強烈なにおいがあるアンモニアを石炭に混ぜて火力発電所で燃やせば、二酸化炭素(CO2)の排出を減らせる――。そんな試みがこの春、日本で本格的に始まった。政府は「脱炭素化戦略」を支える有望な手段とし、輸出も視野に入れる。だが主要7カ国(G7)が4月30日に採択した共同声明で、「脱石炭火力」への道筋が示されたばかり。普及には課題も多く、環境団体からは「悪手」と批判も出る。
愛知県の海沿いにある碧南火力発電所の1基で、4月1日から石炭とアンモニアの「混焼」が始まった。この発電所は東京電力と中部電力の火力発電部門を統合したJERAが運営。ボイラー5基で計410万キロワットの出力がある国内最大級の石炭火力発電所だ。
アンモニアは燃やしてもCO2が出ない。6月までの試行期間中、最大2割まで混焼率を高めて燃え方などのデータを集める。これほど大規模な混焼は世界初。2027年度にも商用化し、発電時のCO2排出量を2割減らす。
政府は50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を掲げる。JERAは発電量の2割超を石炭に頼っており、それまでにCO2を出さない「ゼロエミッション火力」を実現するという。核となるのが、アンモニアだけを燃やして発電する技術の確立だ。
アンモニアの混焼には、ほかの大手電力も前のめりだ。九州電力は昨年に2度にわたってテストをした。中国電力も過去に試行し、他社も導入を検討している。
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