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御池通を進む橋弁慶山、南観音山などの山=2025年7月24日午前9時37分、京都市中京区、新井義顕撮影

 炎天の都大路を11基の山鉾(やまほこ)がゆっくりと進んだ。日本三大祭りの一つ、京都・祇園祭の後祭(あとまつり)の山鉾巡行が24日、京都市中心部であった。猛暑の古都に「コンチキチン」の祇園囃子(ばやし)が響き、約5万人(京都府警発表)が「動く美術館」に魅せられた。

 午前9時半前、山鉾連合会の木村幾次郎理事長が八坂神社と神泉苑(しんせんえん)(京都市中京区)の水を合わせた「青龍神水(せいりゅうしんすい)」を御池通にまき、道を清めた。この儀式は17日の前祭(さきまつり)の山鉾巡行でもあり、祭りの本義を示すという。

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清めの水をまく、山鉾連合会の木村幾次郎理事長=2025年7月24日午前9時30分、京都市中京区、新井義顕撮影

 祇園祭は平安時代の869年に神泉苑であった祇園御霊会(ごりょうえ)が起源とされる。当時の国の数と同じ66本の鉾を立て、疫病退散を祈願した。八坂神社と神泉苑の水のつながりをもとに、2022年から青龍神水で清める儀式が始まった。

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山鉾をひく道に「逃げ水」が現れた=2025年7月24日午前10時45分、京都市中京区、新井義顕撮影

 午前9時半、あらかじめ順番が決まっている「くじ取らず」の橋弁慶山が烏丸御池を出発した。同じくくじ取らずの南観音山が続き、次いで「山一番」の役行者(えんのぎょうじゃ)山。

 山鉾の進行順を確かめる「くじ改め」が市役所前であり、役行者山では市内のレストランで総支配人を務める山田登喜雄さん(51)が臨んだ。

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くじ札を差し出す山田登喜雄さん=2025年7月24日午前10時5分、京都市中京区、佐藤道隆撮影

 文箱(ふばこ)のひもを扇子でほどき、奉行役の松井孝治市長にくじ札を差し出した。独特の所作で扇を振ると、山が動き出した。

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山を呼び込む山田登喜雄さん=2025年7月24日午前10時6分、京都市中京区、佐藤道隆撮影

 山田さんは北海道出身で、6年前に京都に転勤してきた。役行者山の町内にあるホテルで働いた縁で、初めての大役を任された。

 無事に終えた山田さんは「力が入りました。やっぱり暑い。街全体でお祭りをやっているのがすごい」と笑顔をみせた。

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辻回しをする大船鉾=2025年7月24日午前11時22分、京都市中京区、新井義顕撮影

 河原町御池や四条河原町の交差点では「辻回し」があった。しんがりの大船(おおふね)鉾は今年、鉾を飾る下水引(したみずひき)を復元新調した。車輪の下に竹を敷き、豪快に進行方向を変えると歓声が上がった。

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辻回しをする南観音山=2025年7月24日午前10時10分、京都市中京区、新井義顕撮影

 終点の四条烏丸に山鉾が次々と到着した。鷹山(たかやま)は18日、山を組み立てる作業中に真松と呼ばれる松の木を支えるヒノキの丸太の一部が裂け、巡行には、裂けた部分などを切り取って臨んだ。

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青空の下、辻回しをする鷹山=2025年7月24日午前11時6分、京都市中京区、新井義顕撮影

 京都地方気象台によると、京都市の正午の気温は34・4度。午後4時前には今年一番の暑さとなる37・9度を観測した。木村理事長は「この暑い中、お祭りができたことは町衆の誇り。無事に終わったことを非常にうれしく思います」と話した。

 巡行後には、3基の神輿(みこし)が八坂神社に戻る還幸祭(かんこうさい)があった。神輿は17日の神幸祭(しんこうさい)で四条寺町の御旅所(おたびしょ)に安置されていた。夕方、御旅所を出発し、市中心部をめぐった。

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音頭取りのかけ声に合わせ、前へ進む北観音山=2025年7月24日午前10時39分、京都市中京区、新井義顕撮影

現市長と前市長 くじ改めで対面

 京都市の現市長と前市長が、京都市役所前であった「くじ改め」で顔を合わせた。

 南観音山の神事役を務めたのは前市長の門川大作さん(74)。慣例で順番が決まっている「くじ取らず」のため、くじ札を差し出す所作はしなかったが、奉行役の松井孝治市長(65)の前に立ち、口上を述べた。

 裃(かみしも)姿の門川さんは大きく扇子を振りかざした後、「世界の平和、幸せを祈願して奉仕させていただく。優美さと町衆の心意気をご覧いただきたい」と述べると、松井市長は「よろしくお願いいたします」と応じた。

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神事役を務める門川大作前京都市長(左)と奉行役の松井孝治市長(右)=2025年7月24日午前9時57分、京都市中京区、佐藤道隆撮影

 門川さんの家族と南観音山の関係者が知り合いだったことが縁で、市長を退いてから保存会の評議員になったという。

 奉行役は市長が務めるため、2年前までは奉行役としてくじ改めをする人たちを見守った。「今年は町衆の代表として奉仕する立場になり、一つひとつ丁寧に務めました。市長として祇園祭に関わり、それなりに祇園祭のことを知っているつもりでしたが、車方や囃子(はやし)方などが個性を生かしながら協調していることを実感しました」と話した。

 松井市長は「珍しく緊張しているように感じました。伝統と格式ある場で、前市長から言葉をいただき感慨深い」と語った。

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山鉾をひく道に「逃げ水」が現れた=2025年7月24日午前10時51分、京都市中京区、新井義顕撮影
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山鉾をひく道に「逃げ水」が現れた=2025年7月24日午前10時51分、京都市中京区、新井義顕撮影
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辻回しをする北観音山=2025年7月24日午前10時34分、京都市中京区、新井義顕撮影
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御池通を進む橋弁慶山や南観音山=2025年7月24日午前9時35分、京都市中京区、新井義顕撮影

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