この春、「高校無償化」制度の対象が広がった。しかし、2010年の制度開始から全国に10ある朝鮮学校は除外が続き、今回も対象とされなかった。「差別だ」との批判は続いているが、無償化を訴える人の中にも「学校側も変わるべきだ」という意見がある。
「ルーツに誇りを持って生きたい」
3月7日夕、文部科学省前に、東京朝鮮中高級学校(東京都北区)の生徒110人が集まった。生徒は「自分のルーツに誇りを持って生きたい」「朝鮮の言葉や文化を学べる場所は朝鮮学校だけ」と訴え、「無償化を適用せよ」と叫んだ。在校生や日本人支援者らが毎週抗議する「金曜行動」は、この日が560回目だった。
高校無償化制度は、今年度から、生徒1人あたり年11万8800円を上限に、就学支援金が所得制限なく給付される。文科省によると、「全ての意志ある生徒の学びを保障する」という趣旨に沿い、従来、中華学校やブラジル人学校などの外国人学校も対象とされたが、朝鮮学校は外されてきた。
旧民主党政権から不適用が続き、13年に自公政権が正式に除外を決めた。下村博文文科相(当時)は「拉致問題に進展がなく、(北朝鮮を支持する)朝鮮総連と密接な関係にある」などと説明し、北朝鮮との関係を理由に挙げた。
教育方針は「コリアンとして日本に溶け込む」、北から支援の訳は
東京朝鮮中高級学校のウェブサイトなどによると、朝鮮学校は、日本統治時代に母国語を奪われたとして朝鮮人が戦後、各地に建てた講習所が起源。資金繰りが厳しく、韓国からの支援がない中、1950年代後半以降、北朝鮮の資金援助を受けてきた。朝鮮総連系メディアは、援助は25年も続いていると報じている。
同校の尹太吉校長は現在の教育方針については「コリアンとして日本社会に溶け込んでほしいと教えている」と話す。
尹校長によると、生徒は在日4世が多く、日本語が母語。3~4割が日本の大学に進む。日本企業に勤める卒業生もおり、なかには弁護士になった人もいる。韓国ドラマや恋愛話で盛り上がる姿は日本の高校生と変わらない。
授業は朝鮮語が基本。在日に…