(17日、第107回全国高校野球選手権大分大会3回戦 柳ケ浦4―2佐伯鶴城)

 五回裏、2四球と安打の走者を背負い、無死満塁のピンチ。2点を追う展開で、もう1点も奪われたくない。四回から継投した佐伯鶴城の吉田幹太投手(3年)は、腕のアンダーシャツで額を流れる汗をぬぐった。

 昨夏までは内野手。新チームの投手が少ないことから、投手に挑戦することに。筋トレ、柔軟、走り込み。力をつけるために「何でもやった」結果、スライダーの変化や制球に自信を持てるようになった。

 直球は120キロ台で、自己分析は「三振を奪うのではなく、気合で押す投手」。渡辺正雄監督は「打者をどう抑えるか。その駆け引きを短い期間でできるようになったのは、彼の努力の成果」と評価する。

 五回のピンチ。監督からの伝令が届いた。「自信をもって腕を振れ。腕を振ればゼロで帰ってこられる」。その言葉を聞き、吉田投手はベンチやスタンドをみた。みんなの声援が聞こえた。「仲間が逆転してくれる」。そう信じて全力で腕を振った。2人の打者を飛球で打ち取り、3人目を三振に仕留めた。ガッツポーズを繰り返した。

 チームは敗れたが、最後までマウンドを守り、無失点。成長したからこそ、「悔しいです」。あふれる涙をこらえ、球場をあとにした。

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