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名古屋地検が入る名古屋法務合同庁舎

 詐欺罪で起訴され無罪が確定した名古屋市の会社役員の男性(62)が5日、当時の証拠の取り扱いについて経緯を調査するよう、名古屋地検に申し入れをした。

 男性は2019年、虚偽の債権を担保に知人の社長から3千万円を詐取したとして起訴された。21年8月、一審・名古屋地裁は有罪判決を言い渡したが、二審・名古屋高裁で、融資の仲介役だった弁護士と被害者とされた社長との間のLINEのやり取りが明らかになり、検察側の主張などとの食い違いが判明。23年、地裁の差し戻し審判決で無罪となった。男性は「検事が一審判決前にLINEのやり取りを入手していたのに、それを隠蔽(いんぺい)し、不当に有罪を導いた」などと主張し、昨年、国に損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴している。

 男性は、検事を公務員職権乱用容疑などで告訴したが24年に不起訴処分に。不服とした男性側からの申し立てに、名古屋第二検察審査会は今年7月、不起訴相当と議決したが、LINEのやり取りについては「無罪判決の大きな要因になったことは明らか。開示していればもっと早く無罪判決が出された可能性は否定できず、不開示の経緯は検察庁で詳しく検証されるべきだ」と指摘していた。

 男性は「証拠は被告側にも全て開示してほしい」。代理人の吉川哲治弁護士は「捜査機関は、自分たちの武器のように証拠を捉えるが、本来は国民共通の財産で、全て開示されて正しい裁判が行われる。認識を改めてほしい」と訴えた。

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