キラキラしたクリスマスの街頭風景、歳末のおせち商戦、新幹線で故郷に向かう乗客のインタビュー……。そんな景色を見て気が重くなったり、孤独を感じたりするという人たちがいる。なぜ年末年始が「つらい」のか。
「普段仲良くしないのに、『明けましておめでとう』なんて無理がある」
栗きんとんにお煮しめ、黒豆やお雑煮などが並んだ新年の食卓と漫才が流れるテレビ。口をきかない父と母。50年以上前、小学生だった山下信子さん(62)=千葉県=は、お正月に居心地の悪さを感じていた。
酒を飲んでは「バカヤロー」などと叫び、母に皿を投げたり、暴れたりして警察沙汰になったこともあった父。山下さんは泣きながら仲裁に入った。その母は、子どもに当たった。真冬に家から閉め出されたり、熱湯の入ったやかんを投げつけられたり。それでも家族の仲を取り持とうと、学校であったことを話して笑いを取るようにした。
「今だから笑って話せるようになったけど、周りは家族だんらんなのに、何でうちは違うのか、すごく悲しかった」
兄の助けを借りて、21歳で家を出た。年末年始になると友達や彼氏が帰省してしまい、寂しくなる。かといって自分も帰省すると、変わらず嫌な思いをする。その繰り返しだった。
「家が普通でない」認識したのは30歳ごろ
自分の家が普通ではないと認…