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横浜―綾羽 試合後、ベンチ前に整列して横浜の校歌斉唱を聴く綾羽の選手たち=滝沢美穂子撮影
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 甲子園に爽やかな印象を残したチームだった。

 甲子園初出場だけではなく、初戦突破も果たした綾羽。14日の2回戦で、春夏連覇を狙う横浜(神奈川)に挑んだが、1―5で逆転負けし甲子園を後にした。

 選手たちは「明るく前向きに」をスローガンにプレー。千代純平監督(36)はベンチの中央に立ち、表情豊かに試合に向き合う。千代監督について、3年生の学生コーチ・石井悠聖さんは「話しやすい、近所の明るいおっちゃん」と表現する。

 そうやって明るくチーム一丸となって試合に臨む姿が、爽やかな印象を与えた要因だろう。

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 ただ「のびのびとは一線を画している」と千代監督。土台には「しんどい練習ほど明るく前向きに」という「心得」がある。厳しい練習を積み重ねたうえで、劣勢に立たされても、明るく前向きに逆転しようとする。

 選手のほとんどが滋賀県内の中学出身。現チームでベンチ入りした20人は全員がそうだった。中学時代に活躍できなかった選手も多いことから、千代監督の育成力を敬い「千代ファーム」と言われることもある。

 「真面目な選手が多い」(千代監督)といい、昨秋から背番号は選手間投票で決めることにした。「選手からの信頼を得て背番号をつけてほしい」という思いがある。だから選手たちには「ベンチを外れた選手の分も」という思いが強くある。

 選手たちは練習前に、「練習」「礼儀礼節」「返事・反応・会話」「姿勢・行動」で部が掲げる「心得」を確認する。トイレなどの掃除もする。その習慣は、甲子園入り後も変わらなかった。

 大会史上、最も遅い終了時間になった高知中央との初戦は、綾羽の本領を発揮した試合だった。ベンチは明るく、九回に同点に追いつき、延長十回タイブレークの末に「初勝利」をつかんだ。

 横浜との2回戦はミスが痛かったが、6投手でつないで「王者」に立ち向かった姿は、強い印象を残した。

「本当に幸せな場所でした」

 選手たちは2日に宿舎入り。仲間と寝泊まりしたり、甲子園に行ったりするのが「楽しい」と口をそろえた。北川陽聖主将(3年)は「本当に幸せな場所でした。後輩にはもう一度ここに帰ってきてほしい」と話した。

 大舞台を多くの2年生が経験した。遊撃手の小森晴稀選手は「来年、絶対に悔しい思いをしたくないので、しっかり練習したい」と目を赤くした。好投が光った元木琥己(こうき)投手は「チーム力で勝てるチームをつくりたい」と自分の代を見据えた。

 2017年から指揮を執る千代監督にとって、ようやくたどり着いた甲子園。初戦の前には、1、2年生らに「(甲子園に)1回出るだけで終わるつもりはない」と語る場面があった。

 チームは目標だった舞台で2試合を戦った。得た経験値は大きい。試合後、千代監督は「もっと成長するヒントが絶対たくさんあると思う」と話した。甲子園をめざし、ライバルたちと競い合う日々がまた始まる。

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