記者解説 経済部・内藤尚志
日本経済は歴史的な物価高(インフレ)に直面している。生鮮食品を含む消費者物価の総合指数は昨年まで3年連続で前年比2~3%台の上昇率となった。これはバブル期が重なる1989~91年以来のことだ。
物価は経済が活発なときに上がりやすい。バブル期のころは好景気で高揚感もあった。いまはどうか。多くの人がくらしの向上を実感できず停滞感がただよう。
それを映す指標の一つがエンゲル係数だ。家計で使ったお金のうち食費の割合を示す。食事は生きるのに不可欠なため、係数が上がると生活は苦しくなるとされる。
総務省の家計調査によると、昨年は2人以上の世帯で平均28.3%に上昇。バブル期を上回り81年の28.8%以来43年ぶりの水準となった。
家計調査の食費は外食なども含む。食事にあえてお金をかける世帯もあり、エンゲル係数が高いほど苦しいとは必ずしも言い切れないが、最近はコメや野菜といった身近な食べものが高騰している。食費がかさみ、くらし向きの悪化を感じやすい世帯もめだつ。
ポイント
物価高で食費がふくらみエンゲル係数は上昇。生活が苦しくなっていることを示す。政府は賃上げなどで経済が成長軌道に乗ると見込むが、格差が広がる恐れもある。経済を成長させつつ格差を是正し、くらしを底上げする仕組みも整える必要がある。
追い打ちをかけるのが電気や…