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横穴式石室の正面で出土した須恵器と木炭。儀式の跡とみられる=2025年2月19日、奈良県天理市乙木町、今井邦彦撮影
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 豪族・物部氏の墓域とされる奈良県天理市の杣之内(そまのうち)古墳群で、天理大学と天理市教育委員会が前方後円墳、東乗鞍(ひがしのりくら)古墳(全長約83メートル)の発掘調査を進めている。昨年は周囲を囲む周濠と堤を確認。今年は石室の正面で儀式跡の可能性がある土器群などが見つかった。

 東乗鞍古墳の後円部には横穴式石室があり、九州・阿蘇産の凝灰岩で作られた6世紀前半ごろの家形石棺が納められている。当時、軍事氏族として勢力を伸ばしていた物部氏の有力者の墓と推定され、被葬者の候補には、継体天皇の下で九州の豪族・磐井(いわい)と戦った物部麁鹿火(あらかい)などが挙がる。

 2016年に石室内に土が流入していることがわかり、天理大と天理市教委が18年から保存整備を目指して範囲確認の発掘調査を進めてきた。

 昨年度の調査では、東西方向に主軸を置く古墳の南側で、墳丘を取り巻く幅約4メートルの周濠と、ブロック状の土を積んで築いた幅5メートル以上の堤が確認された。

 今年は、横穴式石室の南に向いた入り口正面で周濠跡を発掘。底から6世紀前半の須恵器と共に大量の木炭が出土し、これまで石棺から推定されていた年代が確実になるとともに、埋葬時に周濠で何らかの儀式をした可能性が高まった。

 調査を指揮する桑原久男・天理大学教授(考古学)は「これまで石室以外の情報がほとんどなかった東乗鞍古墳の全容が、次第に明らかになってきた。国史跡『杣之内古墳群』への追加指定を目指して調査・研究を続けたい」と話している。

 今年の調査は終了しており、現地説明会の予定はない。

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