東京のベンチャー企業で働いている男性(24)は週末、留学先で磨いた音楽を教えている。そして時々、血のつながらない親に育てられた特別養子縁組の当事者として、仲間と活動する。
「僕が今うまくいっているのは『Origin』があったから。しんどい思いもしたけど、全部チャラ。養子であることはステータスだと思っています」
Originは、特別養子縁組で育てられた子どもたちの団体。サロンや交流会でつながりを深め、当事者の声を社会に発信してきた。
親と血のつながりがないことを男性が知ったのは17歳、高校2年の夏だった。
吹奏楽で海外遠征するメンバーに選ばれ、パスポートを取ることになった。夕食後のリビングで書類が入った封筒を母から渡された。戸籍謄本の「民法第817条の2」という文字が目に入った。
「これって何?」
母に聞いた。珍しく答えがなかった。
翌朝、通学の電車の中で検索した。「特別養子縁組」「実の親が育てられない子どもを別の親が育てる制度」。心臓がバクバクした。
うそだろ? うちの親は本当の親じゃない?
優しい父と料理上手な母。人並み以上に仲の良い家族で、よく「お父さんそっくり」と言われる。血のつながりがないなんて疑ったことはなかった。
学校で担任の顔を見たら涙が…