シリアと聞いて多くの人が思うのは、今世紀最悪の人道危機と言われた内戦による廃虚だろうか。だが、中野貴行さん(43)の目に浮かぶのは、美しい街並みや優しい人々の笑顔だ。

 中野さんは2008年から2年間、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員としてシリアに赴任。今年4月下旬、15年ぶりに再訪した。

中野貴行さんが写真の裏に書き、ハーリッドさんに渡したメッセージ=中野さん提供

 「覚えていますか」。北部アレッポで再会した女性が、1葉の写真を持ってきた。裏には日本語とアラビア語でメッセージが書かれている。「シリアが、Dr.ハーリッドが、僕は大好きです」。中野さんの字だった。

 中野さんは当時、アレッポに近いマンビジュで母子保健の啓発活動をしていた。ハーリッドさんは拠点にしていた健康センターの所長だった。仕事に協力してくれただけでなく、体調を崩して入院した時は、まっさきに駆けつけてくれた。女性はハーリッドさんの娘のトゥカさんで、当時小学生だった。

 中野さんがシリアを去った翌…

共有
Exit mobile version