「狼煙のみんなの家」が完成し、神事が行われた=2025年7月13日午前11時34分、石川県珠洲市狼煙町、上田真由美撮影

 能登半島の先端に位置する石川県珠洲市狼煙町(のろしまち)に、新たな集会所「狼煙のみんなの家」が完成した。能登半島地震で被災した家屋の瓦を再利用し、地域になじみのある外観を備えている。被災地に住民らの新たな憩いの場をつくる、日本財団のプロジェクトの第1弾だ。

 「みんなの家」は床面積約100平方メートルの木造平屋建て。奥能登らしい黒瓦に、板を階段状に重ねた下見板風の外壁に仕上げた。瓦は、地震で被害を受けて解体した近くの家屋からの約3千枚を再利用。13日には住民らが集まり、完成を祝った。

 狼煙町では、地震で住民のよりどころだった集会所が損壊した。安全に集える場所の整備をめざし、定期的な催しを通じて住民が交流しやすい集会所のあり方を模索。建築家の伊東豊雄さんが理事長を務めるNPO法人HOME-FOR-ALL(東京都)が進める被災地支援の枠組みの中で、「災害時に孤立してもしばらくもちこたえられるように」といった住民の要望も踏まえて、東京の建築事務所が設計した。

「狼煙のみんなの家」が完成し、住民らによる「すずカルテット」が演奏で祝った=2025年7月13日午後0時16分、石川県珠洲市狼煙町、上田真由美撮影

 今後は、住民を対象に「みんなの食堂」として月に2回食事を提供するほか、音楽会や、祭りに使う巨大な灯籠(とうろう)「キリコ」修復のワークショップなども開く。

 運営を担う地元のNPO法人奥能登日置らいの理事長で、地域の区長の糸矢敏夫さん(70)は「能登半島地震で被災した狼煙の願い、全国の多くの支援者の気持ちがこんな形で結実した。子どもからお年寄りまで気軽に集まれて、夢を語れる場にしたい」と話した。

超高齢化のまち、元日に襲った大地震 避難所で始めた「復興会議」

住民自ら「さいはての地」と呼ぶこともある珠洲・狼煙集落。昨年元日の地震で大きく傷つきながら、まちの再生に向けて住民たちが模索を続けた1年を6回の連載で追いました。

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