麻雀(マージャン)はたった一打で、卓上の自由を縛り付けることがある。
解説に入っていたドリブンズ・園田賢がつぶやく。
「これ(パイレーツ・瑞原)明奈ちゃん、マンズの混一色(ホンイーソー)(ホンイツ)テンパイにしか見えない、切り順的にね。みんな切りづらいんですよ。これはやられましたね」
実況の松嶋桃が続ける。
「外からはそう見えるが、実はテンパってもない」
すべては瑞原が少し考えて打った8マンが作りだしていた。
元Mリーガーの朝倉康心プロは「見え方の大事さが分かる一局。長考、少考が必要な場面はあるが、考えて切ったことで仕掛けが弱く見えたり、通せる牌が急に増えたりするリスクも当然ある。でも、打牌を考えることは全部が傷になるわけではない」と振り返る。
牌図はパイレーツ・瑞原、風林火山・松ケ瀬隆弥、フェニックス・浅井堂岐、アベマズ・松本吉弘による10月1日の第1試合東4局6巡目。
トップ目の浅井を2着目で追う瑞原は、「中」と「発」のトイツなど字牌が7枚でメンツは一つもない配牌。1巡目に2枚目の1マン、2巡目にドラの9ピンを引くと、発、中を鳴いて仕掛けていく。
朝倉プロは「形が良くない状態から1マンをトイツにして、端っこのドラも引けた。そこで役役(発と中)を確保して、ドラを使うか、手の中に4枚あるマンズのホンイツに向かうか、さらにチャンタなどもう一つ役をつけるかなどを考えている。序盤は自分の手牌中心に打っていた」とみる。
5巡目に7ピンを引いたことでドラの9ピンを使いやすくなり、チャンタも見えてきた。だが、まだ形が良いわけではない。「おそらく、この辺りで明確に見え方を意識し始めた」と朝倉プロ。
6巡目、瑞原は続けて7ピンをツモる。右手の甲を卓に乗せ、手のひらを上に向けて考える。10秒ほど悩むと、手牌の中の8マンを切った。
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