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複雑な生命が進化し始めたエディアカラ紀の地球のイメージ。浅い海に軟体生物が生息。地球の磁場が弱かったため、オーロラが見られた(C)Michael Osadciw/University of Rochester
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 約6億年前の太古、地球の磁場が現在の3%ほどの強さしかなかったことが鉱物の分析からわかった。米国などの研究チームは、磁場の大幅な減衰によって地球の酸素が増え、複雑な生命が出現する舞台が整ったのではないかと指摘している。

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 論文が5月2日、専門誌(https://doi.org/10.1038/s43247-024-01360-4別ウインドウで開きます)に掲載された。

地上に初めて出現した大型生物群

 恐竜の登場よりずっと昔のエディアカラ紀(6億3500万~5億4100万年前)は、骨や殻のないグニャグニャの軟体生物が海でくらす時代だった。

 地球上に初めて大型生物群が出現したとされる時代で、「ディッキンソニア」という座布団のような平べったい化石などが見つかっている。この時代に、酸素の大幅な濃度上昇が起こったことが判明しているが原因はよくわかっていない。

 米ロチェスター大のジョン・タルドゥーノ教授(地球物理学)らの研究チームは、ブラジルの岩石層にある斜長石に注目した。地球の磁場の強さを知ることができる小さな磁性鉱物を分析したところ、5億9100万年前から2600万年間、地球の磁場は現在の30分の1程度の強さだったことがわかった。

 酸素濃度が増え、生命の多様化が進んだ時代に、磁場は著しく弱かったことになる。記録がある中で史上最低レベルの磁場の弱さだった。

「バリアーが弱まり、酸素が増えた」

 地球の磁場はバリアーとして地球を守る役割がある。「太陽風」と呼ばれる太陽から放出されるプラズマ粒子などが地上へ降り注ぐのを防いでいる。ただ、バリアーの源泉である磁場の減衰こそ、生物繁栄への道を開いた可能性があるとタルドゥーノさんは考えている。

 考えるシナリオは次のようなものだ。

 太陽からのプラズマ粒子が地球に達し、オゾン層を破壊。降り注ぐ紫外線が大気中の水分子を分解し、軽い水素は宇宙に逃げ、重い酸素は地球に残った。結果、数千万年間で酸素が増え、それまで単細胞が中心だった初期の生命が、多くの酸素を必要とする大きくて複雑で高度な生命に進化していった――。

 「仮説だが、磁場を引き起こす地球の核の動きが、生命の進化を加速させたと考えている」とタルドゥーノさんは取材に答えた。

■「私たちの地球は幸運だった…

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