教員によるわいせつ事案のきっかけの一つになっているとして、栃木県教育委員会は3日、児童・生徒とのSNSでの私的なやりとりを禁止し、懲戒処分の対象にすると発表した。だが、SNSは部活などの連絡などにも使われていて、今後線引きは難しそうだ。
県教委によると、禁止するのはLINEなどのSNSや電子メールなどを使った児童・生徒との私的なやりとり。管理職の許可無しに私的なやりとりをした場合は戒告。さらに、内容が著しく悪質なケースでは停職または減給とする。
背景には、SNSが教員による児童・生徒へのわいせつ事案の引き金になっている実態がある。
県教委によると、2014~23年度の10年間に、児童・生徒へのわいせつ事案で懲戒処分を受けた教職員は16人。うち14人がSNSでやりとりをし、「個人的な相談などがきっかけになっていた」(義務教育課)。特に、23年度に処分された4人はすべてSNSが端緒になっていたという。
問題を受け、県教委は昨年10月に臨時校長会を開催。免職処分とする対象について、従来の性行為やわいせつ行為に加え、盗撮などに該当する行為も含めた。また、SNSでの私的なやりとりも規制を強めることにした。
3日の会見で新たな対策を発表した県教委の阿久沢真理教育長は「私的なやりとりは禁じ、使う場合はしっかりした管理下で行うようにしたい。市町の委員会にも県との整合性ある対応を求めていきたい」と述べた。
ただ、「私的なやりとり」の線引きの詳細は決まっていない。現場では、既に部活の練習日程の共有などでSNSが使われているが、顧問がSNSで日程の相談に乗るといった行為が禁止されるのか、などの判断基準は今後つくるという。
22年に同様の制度を設けた広島県教委は23年1月、個人のSNSで生徒に連絡をした県立高の教員2人を戒告の懲戒処分にした。ともに部活の連絡をしただけだったが、同教委は「閉じた空間での一対一のやりとりは不祥事につながるリスクがあった」と説明する。
学校側は線引きに悩まされそうだ。宇都宮市教委の担当者は「すでに生徒・児童とのやりとりは禁止し、必要な場合は保護者とするように徹底している」と話す。一方、ある高校の運動部の責任者は、「緊急時や体調不良などの連絡ではSNSを使っている。どういう場合には許されるのか、具体的な基準を早く示してほしい」と訴える。(重政紀元)