メディア空間考 高津祐典
将棋のAI(人工知能)は優しくない。
解けない問題の解法を聞いたら、ブスッと答えだけ教えてくれる不機嫌な教師みたいだ。
確かに形勢を数値化して、次の候補手を幾通りかは示してくれる。この手を指せば50対50、この手なら39対61といった具合に。将棋に詳しくなくてもどちらが優勢か分かるから、観戦が楽しめるようになった。
でも「なぜこの手がいいのか」が分からない。こんな風に進むと○手先に飛車を取られる筋があって……といった思考プロセスまでAIは教えてくれない。
ひどい教師だとなじりたくなるけれど、AIの進化が状況を変えるかもしれない。
対話型AIと呼ばれるChatGPTの新バージョン、ChatGPT-4o(オー)が発表されて、驚いた。人との会話のように応答がスムーズになり、人間の感情も読み取りながら答えを導いてくれるという。
対話型AIが進化すると将棋の研究も随分変わるのではないかと思って、ある棋士に問いかけた。
対話型AIは将棋をどう変えるのでしょうか?
元名人で、AIと将棋の関係を突き詰めている佐藤天彦九段は、かつて羽生善治九段が提唱した「高速道路論」を引きながら、知性とは何か、ということまで踏み込んで答えてくれた。
そもそも棋士は不機嫌な教師…