岩手県大船渡市で起きた大規模な山林火災は避難者が増え続け、避難生活も長期化している。専門家らは避難所の利用や健康対策の必要性などを呼びかけている。

 県によると、避難指示の対象は市民の約15%にあたる約4500人。エリアが拡大し、避難所を移り変わったり、車中泊せざるを得なかったりするケースも相次いでいる。

 避難所は避難区域から離れた場所に複数設置され、避難先は住民が決める。地震や津波、大雨などの災害とは異なり、地区の住民たちが同じ避難所に集まってお互い助け合うような避難生活ではない。

 スペースの確保やルールづくりなど避難所の運営は開設時から行政が担ってきた。延焼範囲の拡大で避難所が増え、大船渡市職員だけでは対応しきれず、県内の自治体から派遣された応援職員延べ約370人がサポートしている。

 夫婦で車中泊を続けている同市三陸町綾里の自営業の男性(82)は「近所の人がどこに居るのか全くわからない。すぐに戻れると思って、何も持たなかった。着替えや食べものはスーパーなどでちょこちょこ買った。もう少しで現金が底をつく」と心配そうに話した。避難所で食事を受け取るのは「気が引ける」と遠慮しているという。

 地域防災が専門の山形大学の熊谷誠講師は「避難所はそこで生活する人以外に、車中泊する人などへの物資や食料の配布拠点ともなる。避難所に来たことを伝えれば、援助が必要だとカウントされ、行政側も避難者を把握できる機会になる」と呼びかける。

 緊急の避難だったため、通帳やキャッシュカードを持ち出せなかった住民も多い。東北財務局は金融機関に対し、本人確認ができれば、被災者の預貯金の払い戻しなどに応じるように求めている。

 熊谷講師は「ほかの避難者との関係や厳しい寒さなどで仕方なく車中泊を選択する人もいる。決して望ましい環境ではないため、飲み物やトイレは控えず、時々体を動かすなどエコノミークラス症候群の対策を十分に行い、体調不良の時は医療機関などに頼ることも必要」としている。

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