「逆転勝訴」などと書かれた旗を手にする原告ら=2025年1月29日午前11時13分、福岡市中央区、山本達洋撮影

 国が2013~15年に生活保護基準額を引き下げたのは生存権を保障した憲法25条などに反するとして、福岡県内の受給者39人が減額決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(松田典浩裁判長)は29日、原告の請求を棄却した一審・福岡地裁判決を変更し、うち37人の減額決定を取り消した。

 同種訴訟は全国29地裁で31件が起こされており、判決のあった一審では原告勝訴18件、敗訴11件。二審は今回の福岡高裁が5件目で、これにより勝訴2件、敗訴3件となった。原告勝訴となった23年11月の名古屋高裁は減額決定の取り消しに加え国に賠償命令も出した。

 訴訟では、国が引き下げの理由とした二つの「調整」の妥当性が争われた。国は13~15年の改定で、08~11年の物価下落を反映させる「デフレ調整」と、年齢・世帯人数・居住地域ごとに低所得世帯の消費実態に合わせる「ゆがみ調整」を実施。生活保護のうち食費や光熱費など日常生活に必要な費用にあたる「生活扶助費」の基準額を計約670億円削減した。削減幅は最大10%となった。

 原告側は、デフレ調整について専門家の検討を経ていなかったり、物価下落が大きくなる起算年や算出方法を選んだりしたなどとして、厚労相の裁量権の範囲を逸脱・乱用したと主張。ゆがみ調整でも、基準額が増える一部の世帯まで「激変緩和措置」として増額分を半減させられたのは不当だ、などと訴えていた。

 福岡地裁は21年5月の判決で、専門家への意見聴取は法律上の要件ではないことや、デフレ傾向でも基準額が改定されず、受給世帯の可処分所得が実質的に増えていたことなどを挙げ、デフレ調整の判断に「過誤や欠落があるとはいえない」と認定。ゆがみ調整の激変緩和措置についても「著しく不合理とはいえない」などと指摘し、原告の請求を棄却した。

 弁護団によると、原告数は一審判決時は84人だったが、控訴しなかった原告もおり39人になった。

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