国が2013~15年に行った生活保護基準額の引き下げは違法だとして、石川県と富山県の受給者らが減額の取り消しなどを求めた2件の訴訟の判決が17日、名古屋高裁金沢支部であった。大野和明裁判長は引き下げを違法と判断し、減額決定を取り消した。一方、国の賠償は認めなかった。
同様の訴訟は全国29地裁で31件起こされた。原告の弁護団によると、先行する2件の訴訟で6月、最高裁が引き下げを違法と判断してから初の控訴審判決だった。
問題となったのは、食費や光熱費などにあたる「生活扶助」の基準額の引き下げ。3年間で平均6.5%、最大10%に及んだ。訴訟の争点は、引き下げが厚生労働相の裁量権の範囲内といえるかどうかだった。厚労相は物価の下落に合わせて保護費を減らす「デフレ調整」を実施していた。
判決は、物価変動率のみを指標としたデフレ調整について「専門的知見との整合性を欠くところがある」と指摘。「厚労相の裁量権の範囲の逸脱や乱用があった」とした。
一方、一般の低所得世帯と生活保護世帯の均衡を図るとした「ゆがみ調整」については「客観的な数値などとの合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるとはいえない」とした。
また損害賠償については「厚労相が漫然とデフレ調整の判断をしたとまでは認められない」として棄却した。最高裁の判断に沿う内容だった。
今回の控訴審判決は、生活保護の引き下げについて金沢地裁が「適法」、富山地裁が「違法」とそれぞれ判断した2件の訴訟について言い渡された。