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生活保護引き下げ訴訟で「勝訴」の旗を掲げる原告ら=2025年9月17日午後2時9分、金沢市丸の内、杜宇萱撮影

 生活保護基準額の引き下げの違法性を問うた2件の訴訟の控訴審判決は、受給者らが訴えた減額の取り消しを認めた。原告側の会見では「勝訴」「歴史的な判決だ」との評価の一方、6月の最高裁判決を丸写ししたかのような判決文に不満の声が上がった。

  • 生活保護基準額引き下げは「違法」 高裁金沢支部が判決

 金沢、富山両市の受給者らが起こした訴訟。名古屋高裁金沢支部の17日の判決は、デフレ調整による基準額の引き下げについて、一部で厚生労働相の裁量の逸脱や乱用を認めた。ただ「厚労相が漫然と判断をしたとまでは認められない」として国の賠償は認めず、最高裁の判断と同様の内容となった。

 原告弁護団の伊藤建弁護士(富山県弁護士会)は「結論としては勝訴判決だが、最高裁の判決とほとんど同じ文章で驚いた」と述べた。「裁判官一人ひとりがちゃんと(原告に)向き合ってほしいと期待していたものとは違った」と言う。

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生活保護引き下げ訴訟の判決後、報告集会を開く原告や弁護士ら=2025年9月17日午後3時26分、金沢市大手町、杜宇萱撮影

 ただ最高裁判決を受け、厚生労働省は専門委員会を設置して対応を検討するなど動きが出ている。西山貞義弁護士(同)は縦長の巻紙を伸ばし、「不断の努力で人間の尊厳守り抜く」との文字を示した。「被害回復のため、今後は政治や行政と闘わなければならない。裁判も長かったが、これからが本当の正念場と思い、このスローガンを用意した」と語った。

提訴から10年超、受給者の思い

 「裁判長には、人の命を預かって仕事をしていることに気づいてほしい」。原告の真田芳弘さん(79)=金沢市=はそう願って判決に臨んだ。

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生活保護引き下げ訴訟の判決のため名古屋高裁金沢支部に向かう原告ら=2025年9月17日午後1時7分、金沢市丸の内、杜宇萱撮影

 生活保護の受給を始めたのは60代半ばの2009年。そのときまで、受給を選択肢として考えたことはなかった。

 金沢市内の工業高校を卒業後、電機メーカーや電気工事の会社で働いた。工事現場のシステム管理などにあたり、こつこつと貯蓄も増やした。2500万円ほどになっていた。

 60歳ごろ、株への投資を始める。2000年代半ばのことだ。だが、08年のリーマン・ショックで「すべてを失った」。

 自殺を考えて絶食し、体重は…

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