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 かつて日本には、「おなかを痛めて産んでこそ、子どもに愛情が湧く」といった固定観念がありました。でも、出産を経ずに子育てをする人もいます。特別養子縁組で迎えた長女を育てる、元TBSアナウンサーで兵庫県姫路市教育長の久保田智子さんに、出産や子育てに対する思いを聞きました。

【アンケート実施中】「産みの苦しみ」を考える

 東京都は10月から無痛分娩に最大10万円の補助を始めます。「少子化対策の一環」である半面、「おなかを痛めて産んでこそ母性が芽生える」「出産の痛みに耐えることは美徳」といった「産みの苦しみ」を重視する傾向に一石を投じる動きだ、という見方もあります。「産みの苦しみ」をめぐる価値観について考えます。

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生後7カ月の長女を抱く久保田智子さん(右)=久保田さん提供

 ――特別養子縁組で長女を家族に迎えたことを公表しています。

 娘は小学1年生になりました。夫とは仕事の都合で普段は別々に暮らしているので、平日は「ワンオペ」です。

 少し前には学校への行き渋りがあったり、私への試し行動が増えたりしました。「私の愛情が足りなかったのかな」「言い方が悪かったのかな」と考えてしまうことも。仕事をしながら、娘を犠牲にせず、向き合うことの難しさを痛感しています。

 ――妊娠・出産を経ずに子育てが始まることへの不安はありましたか。

 「自分は何もしていないのに、子どもを可愛いと思えるのか」という不安はありました。妊娠を経ていたら、食べ物に気をつけるなど、できることをやって手応えを感じられたかもしれませんが、「スタート時点で私はマイナスかもしれない」と漠然とした不安を抱えていました。

 でも、いざ娘を迎えたら「かわいい」「いとおしい」という思いがふつふつと湧き上がってきました。

 「預かった責任がある。できることは人一倍やらないといけない」と子育てに没頭しましたが、全然苦でなく、楽しかったです。

 一方で、「私は産んでいない」と劣等感を感じたこともありました。

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