石川県の能登半島で、5月上旬に本格化する田植えに向けた準備が進んでいる。元日の地震で田んぼや用水路が被災し、奥能登の作付面積は例年の6割程度と見込む。それでも、農家は「この地の稲作を絶やすわけにはいかない」と前を向く。
4月下旬の能登半島。水を張った田んぼをかき混ぜる「代(しろ)かき」に多くの農家が追われていた。春先の風物詩だが、今年は特別な努力を重ねてここまでたどり着いた。
能登町神和住の農事組合法人「SKYファーム」は例年、60ヘクタールに石川県のオリジナル米「ひゃくまん穀」や「能登ひかり」を作付けし、多くは地元で消費される。
「田んぼにひびが入り、用水路は土砂で埋まった。今年の作付けは無理だろうと心が折れかかった」。父と共に法人を経営する青木健一さん(43)は振り返る。
田んぼや用水路の修理を地元の土木業者に依頼。20人近いボランティアの力を借り、2人の従業員と共に用水路にたまった泥をかき出した。30ヘクタールに作付けできそうだ。「多くの人に支えられて農業をしていることを改めて認識した」という。
人手不足に対応、新たな取り組みも
県によると、奥能登2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の今年の米の作付面積は、昨年の2800ヘクタールから1600ヘクタールに落ち込む見通しだ。奥能登を管轄する「JAのと」の担当者は「田んぼは放置すると雑草が根を張り、作付け再開に多大な労力がかかる。将来の農業を維持するためにも一日も早い復旧が必要だ」と訴える。
田んぼの損壊に加え、人手不…