日本高野連で審判規則委員長を務める尾崎泰輔さん(59)が5日、佐賀市内で「問い直される高校野球の存在意義」と題して講演した。
佐賀県高校野球連盟が開いた「指導者・審判委員合同研修会」の一環で、県内の監督や審判委員ら約90人が聴講した。
30年以上のアマチュア審判の経験がある尾崎さん。自身の経験を語る中で、2022年春の選抜高校野球大会の試合中、場内マイクで謝罪した出来事について触れた。
問題の場面は無死一塁、打者が送りバントをした時に起きた。ファウルゾーンに出るか出ないかの微妙な打球が、不規則なバウンドの末にフェア側で止まった。
球審だった尾崎さんは「フェア」と判定。ボールは一塁へ送球され打者はアウト。一塁走者も一、二塁間に挟まれアウトになった。
しかし、一塁走者が「二塁塁審がファウルのジェスチャーをしていた」と訴え、審判団が協議。二塁塁審が誤ったジェスチャーで走者を止めたことが確認できたという。
尾崎さんは判定ミスと認め、場内マイクで「私たちの間違いでした。止めた走者への守備行為はなかったので二塁へ進めて、1死二塁で再開します。大変申し訳ありません」と判定の変更を説明し、謝罪した。
異例のアナウンスはSNSなどで称賛された一方で、関係者からは「規則に基づいて戻したなら、それでいいはず。なぜ謝った」や「走者は二塁に進めず、一塁でよかった」などの非難もあったという。
尾崎さんは当時を振り返り、「自分はたたかれてもいいが、あの場面で高校生に対して、人としてどうするべきかを考えた」と話した。
続けて、指導者には野球を教えるだけではなく、学生が高校野球から何を学ぶかまで意識して指導してもらえればと訴えた。
最後に、運営する連盟とチーム、審判が互いを尊敬して三位一体となり、少子化や酷暑など激変する環境に的確に対応してもらいたいと結んだ。