46年前、前橋高校のエース松本稔さんが甲子園史上初の完全試合を達成した様子やチームメートとの青春時代を描いた「昭和高校球児物語 前高(まえたか)完全試合のキセキ」(ぐんま瓦版)を、当時野球部の主将だった川北茂樹さんが出版した。3月23日に前橋市で開かれた記念トークショーには63歳となったチームメートが集まり、歴史的試合を振り返った。
1978年3月30日、選抜大会1回戦の比叡山(滋賀)戦は九回表2死、完全試合までアウト一つに迫った。新3年生がわずか8人のチーム。マウンドでエース松本さんが空を見上げた。川北さんは三塁手だった。
「穏やかな青空。微風。白い雲が所々に漂っていたが、松本には見えていたのだろうか。三塁手の守備位置から見ると、松本は目を閉じているようにも見えた」(229ページ)
偉業達成直前の有名な場面について、川北さんは著書の中で、そうつづった。
トークショーで松本さんはこの場面について笑いを交えて説明した。「時間があったら上を見上げようと前から決めていたんですよ。テレビカメラが捉えて絵になるかなと思ってね」
「『もしかしてノーヒットノーラン?』と頭をよぎった。実際は完全試合が進んでいた」(227ページ)
川北さんは当時、完全試合とは思っていなかった。一方、松本さんは七回ごろに「もしかしたら」と思った。「誰も走者が出ないのは完全試合って言ったかな、みたいな気持ちがわいてきて。これ、そうだなと」
著書では、完全試合を達成するきっかけになった出来事も紹介している。
「歴史的試合の大きな要素と…