高川学園―日大三 試合後にベンチ前で整列する高川学園の選手たち=滝沢美穂子撮影

 夏の甲子園で惜しくも8強入りを逃した高川学園。春夏通じて初の甲子園2勝はかなわなかったが、リードされても果敢に巻き返す「攻める野球」を貫いた。寮長として、副主将として、チームを支えてきた2人の控え選手が「夢舞台」での2試合を振り返った。

 「4番の遠矢を中心に打線がしっかりつながった。チームの成長を感じた」。こう話すのは小山優輝也選手(3年)だ。

 控えの二塁手。打撃力で勝る衛藤諒大(あきひろ)選手(2年)にレギュラーの座を譲ったが、寮長として部員80人の寮生活をまとめてきた。練習で疲れ、日課の掃除を怠りがちな部員を叱るなど憎まれ役も引き受けてきたという。

 そんな小山選手が「こいつら、すごいな」と舌を巻いたのが、8―5で快勝した未来富山(富山)との初戦だ。

 一回裏に本塁打で先制されながら、直後に遠矢文太主将(3年)の本塁打など4安打を集めて逆転。中盤にも集中打で引き離し、U18(18歳以下)日本代表候補の左腕エースを攻略した。

 三塁コーチャーとして走者に指示を送りながら、「先制されても辛抱しながら巻き返す姿に、今までにない頼もしさを感じた」という。

 一方で、歯がゆさを覚えた場面もあった。

 4―9で敗れた日大三(西東京)との第2戦。遠矢主将の適時打で先制した直後の一回裏、先発の木下瑛二投手(2年)が打者一巡の猛攻を浴び、5点を失った。捕球や挟殺プレーのミスなど守備の乱れも痛かった。「三回に3点を返す反撃を見せただけに、もう少し踏ん張っていれば」と小山選手は悔やむ。

 この回途中で救援した松本連太郎投手(3年)は粘り強く投げ抜いたが、七回に2点を失い、突き放された。負けん気の強い速球派の木下投手が先発して流れをつくり、冷静沈着な松本投手で反撃をかわす「必勝リレー」は思うように機能しなかった。

 それでも、副主将の徳原与文(よしふみ)選手(3年)は、「レギュラーや控え、スタンドの部員が一つになって戦えた」ことに充実感をかみしめている。

 関西入りしてから2週間余り。決戦に備え、チームはレギュラーと控えのメンバーに分かれ、実戦形式の練習を繰り返した。未来富山戦に向けた左腕対策で、打撃練習の投手を務めたのは控え左腕の斉藤瑠牙(りゅうが)投手(3年)。ピッチャープレートの2歩手前から1日100球近くを投げ込み、攻略の影の立役者となった。

 本番の試合では大雨の影響で到着が遅れた応援部隊が四回に球場入り。大音量での声援が、遠矢主将の走者一掃の3点二塁打を後押しした。

 未来富山戦では出番のなかった小山選手と徳原選手だが、日大三戦では八回から出場。あこがれの舞台で苦楽をともにしてきた仲間たちと白球を追った。

 秋からの新チームは木下投手ら甲子園を経験した2年生が中心になる。

 2人は口をそろえた。

 「必ずここに舞い戻り、次こそは初の2勝を挙げてほしい。一丸となって戦えば、きっとかなえられる」

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