第107回全国高校野球選手権大会で、日大山形は1回戦で県岐阜商に3―6で敗れた。しかし、選手たちの奮起した跡は、甲子園ではっきりと見えた。
1番打者の小川大智(だいち)選手(3年)は、初回に出塁して先取点のホームを踏んだ。打ったのは内野ゴロだったが、相手のエラーを誘った。鋭いスイングを取り戻し、強い打球を打ち返したからこその出塁だった。
山形大会は打率1割7分4厘と苦しんでいた。原因は上体の使い方にあった。左肩が開かないように意識するあまり、右側に体をひねり、窮屈な構えになっていた。
大阪入りしてから修正し、荒木準也監督(53)からも「調子が上向いている」と期待されていた。甲子園ではヒットこそ出なかったが、センターの守備ではライナーに飛びついて捕球するファインプレーも見せ、攻守で立派に巻き返しを果たした。
打線は相手エースの変化球をとらえられず、7安打に抑えられた。それでも、食らいつこうと奮闘した。
4番の佐藤塁選手(3年)は、球の左下を狙って打つ。右打者で大振りにならないよう、十分に引きつけてから打つためだ。
一回1死二、三塁の打席ではショートへのゴロだったものの、しぶとい打撃で三塁走者をかえす適時打となった。
背番号18の土田健琉(たける)選手(2年)は、山形大会では3打数無安打に終わっていた。それでも、思い切り振り抜く打撃を徹底した。甲子園では九回に代打で出場。追い込まれた2死二、三塁の場面でセンター前にはじき返し、2点を取り返す勝負強さを発揮した。
投手陣では、先発したエースの小林永和(とわ)投手(3年)が四回まで無安打無失点に抑える好投だった。山形大会ではあまり投げなかった、大きく落ちる変化球パームボールを効果的に使い、進化を続けようとする姿勢を示した。
失敗をバネにして巻き返す。苦手に対しても歯を食いしばる。ここ一番で底力を出す。そんな選手たちの頑張りは、山形のチームの手本になるだろう。
試合後の、岩下瑛斗(えいと)主将(3年)の謙虚さも紹介したい。取材の場では悔しさをこらえ、凜(りん)とした表情でこう切り出した。
「試合ができたのは(途中の降雨後にグラウンド整備をした)阪神園芸さんのおかげ。甲子園に来ることができたのも、山形の人たちの応援や、山形大会の相手がいたからこそ。感謝の気持ちでいっぱいです」
選手たちは力を尽くした。プレーも、振る舞いも、山形代表にふさわしいチームだった。