奈良県三郷町の臨時町議会が31日に開かれ、町有の温泉施設「信貴の湯」を4月に民間企業に無償譲渡するための関連条例の廃止が、賛成多数で可決された。施設整備に内閣府の交付金を使っており、その際に予定した譲渡を可能とする時期を6年前倒しにする計画だったが、内閣府の承認が得られずに断念した。
「信貴の湯」は2021年に、町内の農業公園「信貴山のどか村」の町有施設を改装して開業。約3億9千万円の改装費用の半分が交付金でまかなわれ、10年間は町が所有するとされた。
だが、町が指定管理者とした町内の企業「泉郷」(信貴南畑1丁目、山岡告章社長)が、必要な条例改正を経ずに上限を超える利用料の値上げをし、町に早期の無償譲渡を要望。町は要望を受けて譲渡を今年4月に前倒すため、3月議会に信貴の湯の「設置条例を廃止する条例」を提案し、同17日に可決された。
ただ、この日の臨時議会で町は、折衝していた内閣府から21日に、前倒しを「承認できない」との連絡があったと説明。「設置条例を廃止する条例の廃止」を提案し、可決された。
議員からは、条例改正を経ない値上げをした企業を問題視する声が相次ぎ、町は企業から値上げの相談を受けた上で、条例改正を提案せずに容認していたことを認めた。