「とまり木」と名付けられた教室が、東京都品川区の区立義務教育学校「八潮学園」にある。普段の教室に入りづらい子どもたちに向けた、学校内の居場所であり、学びの場だ。
早稲田大で心理学を学ぶ学生らと当時の教員らが中心となり、2011年に始まった。今も同大の学生がボランティアとして関わる。
昨秋、10人の子どもが登録するこの教室に複数回通った。午前10時すぎ、子どもたちは三々五々やってくる。まずは計算問題。開設当初から関わる田中乙菜(おとな)・共立女子大准教授(心理学)は「私的な時間との区切りであり、ウォーミングアップ。簡単な問題をすらすらと解くことで、『私はできる』という感覚を持ち続けてほしい」と話す。
水曜日は図工・美術の授業があり、小野川幸江先生が美術室で子どもを迎える。「授業でやっている課題を出す時もあれば、『何でもいいから好きなものを作って』と言う時も。そうした経験、今の子どもたちには足りないような気がして」
幻想的な絵を描く小学生がいた。見ていると、絵を指して「ドリームコアっていうジャンル。超現実主義っていうか」と教えてくれた。「絵、好きなんで。だから来ている」とも。別の小学生は「絵も好きだけど、人と話すのが楽しいから来ている。ここの人は好き」。
「みんな一緒」になじめなかったり、先生と合わなかったり。そして、疲れ、心が傷つけられて……。菅野秀一副校長は「色々な子がいる。でもどの子にとっても、八潮学園が『あなたの学校』。できることはしたい。『とまり木』はその一つ」と言う。
不登校の小中学生は全国で35万人に迫る。ただ、不登校と一口に言っても状況や状態は様々だ。「とまり木」の形が合う子もいれば、学校まで来るのもしんどい子がいる。万能薬はない。だからこそ、学校の内外に多様な場が必要であり、学校のあり方の問い直しも必要だと感じる。八潮学園からの帰り道、そんなことを考えた。