激しい関節痛を起こす痛風。世界の約262万人の遺伝子を解析した結果、痛風の起こりやすさと関連する遺伝子の領域が、377カ所あることを国際的な研究チームが特定した。このうち149カ所は、今回新たに見つかったという。防衛医科大や米アラバマ大など18カ国によるチームが、研究成果を科学誌に発表した。
生活習慣だけじゃない、遺伝子の個人差も関連
痛風は、世界でも患者が増え続けている激痛を伴う関節炎だ。血液中の尿酸値が高い「高尿酸血症」の状態が続いたあと、尿酸の結晶に対する免疫反応が起こって、激しい「痛風発作」が起こる。日本では130万人を超える患者がいて、予備軍はその10倍ほどいるとされる。
痛風はかつて「ぜいたく病」とも言われ、栄養価の高い食事をしている、太った、成人男性に多いというイメージをもたれてきた。ところが、近年の研究で、生活習慣だけでなく遺伝子の個人差も、発症に大きく関連することがわかっている。
例えば、尿酸値が高くなる原因には「尿酸をつくり過ぎるタイプ」と「尿酸の排出がうまくいかないタイプ」があり、尿酸の輸送に関わる遺伝子の変異が大きく影響していることがわかっている。こうした遺伝子をターゲットにした治療薬が、実際の診療で使われている。
「尿酸値が高くても痛風にならない人」のなぞ
一方で、尿酸値が高い人は誰でも痛風になるか、というとそうではない。実際には「尿酸値が高いのに痛風にならない人」も多く、痛風の発症に関わる要因は他にもあることが、これまでも示唆されていた。
今回、研究チームは、ヨーロッパ系、東アジア系、ラテン系、アフリカ系という四つの人種集団について、痛風の人(約12万人)と、痛風ではない人(約250万人)の遺伝子をゲノムワイド解析(GWAS)という手法で調べた。特定の病気などと関連する遺伝子の場所を、網羅的に調べる手法だ。その結果、痛風の発症と関連のある遺伝子領域377カ所を同定。その中には、従来知られていた、尿酸の輸送に関わる領域などの他に、「炎症の起こりやすさ」に関連する領域が含まれることを、今回新たにつきとめた。
研究チームの一人、防衛医大の松尾洋孝教授は、「痛風は高尿酸血症と炎症反応の2段階で起こるが、今回2段階目に関連する遺伝子領域も見つかったことは興味深い。痛風は、ゲノムの個人差に応じた検診や予防、治療ができる可能性が高いと期待されている。国内でもさらに研究を進めて、成果を社会に還元したい」と話していた。
論文は、科学誌ネイチャー・ジェネティクスに掲載された(https://doi.org/10.1038/s41588-024-01921-5)。(鈴木彩子)