Smiley face

 ウチの息子は大学で登山サークルに入っている。ときどき不安になる。「こんな大雨なのに大丈夫か」。そう妻に言うと、彼女はサッとスマホを差し出した。「大丈夫。もう下山したみたい」。画面に山を下りた息子の軌跡が表示されていた。それが登山アプリのヤマップ(福岡市)だった。

 山の中は携帯電話が通じないことが多い。しかし、人工衛星と結んだGPS(全地球測位システム)はつながる。そこでヤマップは、登山する前にあらかじめ国土地理院の地図をダウンロードしておき、GPS機能を使って自分がどこを歩いているのか、スマホの画面上でわかるサービスを生み出した。

 2013年のサービス開始から、10年余りでヤマップのアプリのダウンロード数は440万を超え、そのうち毎月利用しているとみられるユーザーは200万人弱に上る。レジャー白書によると、22年の登山参加人口は500万人と推定され、ヤマップがいかに高いシェアを握っているかがわかる。

 それだけ多数が利用するようになると、ビッグデータであり、社会のインフラとなる。

 航空測量を元に作られた国土地理院の地図は、多くの人が実際にGPSを頼りに歩いてみると、登山道の位置が異なっていた。ヤマップは17年、膨大な利用者の移動経路情報を匿名化した上で国土地理院に提供し、それをもとに地理院が登山道を修正する協定を結んだ。

 山岳遭難を防ごうと、全国2…

共有
© 2024 Japan Today. 無断転載を禁じます。