(1日、東京六大学野球春季リーグ最終週第2戦、早大6−5慶大)
同点の三回、2連続四球で満塁に。ここまで「不調だった」という早大の5番打者、前田健伸(4年、大阪桐蔭)が打席に立った。
フルカウントまで粘り、直球をバックスクリーンに運んだ。春季リーグ第1号は、貴重な満塁本塁打となった。
追いつかれた終盤も、自慢の長打力で打開した。八回、二塁打を放って決勝点にもつなげた。
打率は2割1分と低迷 監督自ら打撃投手に
中軸ながら試合前まで打率は2割1分、本塁打0本。周囲の期待を裏切る成績が歯がゆかった。
不調の期間、日課にしていたことがある。練習終了後の特打だ。小宮山悟監督と金森栄治助監督が打撃投手を買って出てくれた。その心遣いに報いたかった。
神宮球場を埋めた2万9千人の前でアーチをかけた後、ベンチ前で小宮山監督に異例のハグで迎えられた。
「ずっとバッティングピッチャーをやったんだから、親心です。よくぞ打った」と小宮山監督はしてやったりの表情。前田健が「(ハグが)うれしかったです」と言うと、監督は「じゃあ毎回だな」と報道陣を笑わせた。
この日まで4連勝で、逆転優勝へ望みをつないだ。前田健の復調は、3連覇に向けての追い風になる。4番の寺尾拳聖(4年、佐久長聖)は打率4割超、3番で主将の小沢周平(4年、健大高崎)も3割7分と好調を保ち、優勝決定戦で戦う明大に重圧をかけられる中軸となった。小沢は「明大はやりたくないと思っていると思う。自分たちの方が勢いがある」と自信をのぞかせた。