この秋、肉眼で見える明るさになる可能性がある「紫金山・アトラス彗星(すいせい)」が地球に近づいている。夜明け前の東の空に見え始めた彗星を30日未明、朝日新聞社機「あすか」で三陸沖の太平洋上空約8千メートルから撮影、長い尾が確認できた。
彗星は氷を多く含んだ小さな天体。太陽に近づいて氷が溶けると、ガスやチリを放出して長い尾をひくことから、「ほうき星」と呼ばれてきた。
紫金山・アトラス彗星は2023年初め、中国の紫金山天文台と南アフリカのアトラス望遠鏡が相次いで発見した。
彗星はこの時、木星より遠くにあったにもかかわらず発見できたことから、本体がかなり大きいと考えられた。
計算では、彗星は9月28日に太陽に最接近したあと、10月12日に地球に最も近づく。この間には肉眼でも見える明るさになる可能性がある。今のところ、北斗七星やカシオペア座の星々くらいの2等星ほどになりそうだ。
日本では、まず9月末から10月初めまで、夜明け前の東の空に現れる。午前4時半ごろ、ほぼ真東の水平線近くの低い空にいるはずだ。
彗星はその後、いったん見えなくなるが、10月中旬からは夕方の西の空に現れる。少しずつ高度を上げ、10月いっぱいは目で見える明るさを保つ可能性がある。
ただ、彗星は「汚れた雪だるま」と言われるくらい不安定な天体で、確実な予想は難しい。米国の天文学者は7月、「太陽に近づく前に崩壊してしまうだろう」とする論文を発表した。
76年周期のハレー彗星のように定期的に戻ってくる彗星がある一方、紫金山・アトラス彗星が太陽に近づくのは今回が最初で最後とみられ、過去の観測例がないことが予測を難しくしている。
それでも、小惑星探査機「はやぶさ2」が9月2日に尾をなびかせる姿を撮影するなど、明るくなっている。9月下旬には、ハワイの国立天文台すばる望遠鏡に朝日新聞社が設置している星空カメラでも、長い尾が見え始めた(https://www.youtube.com/@astroasahi)。
彗星は、双眼鏡があると観察しやすいほか、写真にはよく写りそうだ。(佐々木凌)
彗星(すいせい)の専門家で国立天文台の渡部潤一・上席教授(惑星科学)に、本社機「あすか」に同乗してもらい、紫金山・アトラス彗星の現状とこれからについて聞いた。
「彗星は順調に明るくなって…