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「黙秘しても『説得』という名の取り調べは続く。それに耐えられない人には、黙秘権が保障されない。それでいいのだろうか」。RAIS(取調べ拒否権を実現する会)を立ち上げた高野隆弁護士は問いかける=2025年3月7日、東京・秋葉原、阿部峻介撮影

 黙秘権はあっても、取り調べを拒めば、車いすに乗せてでも連れて行く――。そんな捜査をめぐって異例の裁判が起こされる。逮捕された容疑者の弁護人は、昨年6月にできた「取調べ拒否権を実現する会(RAIS(ライス)=Right Against Interrogation Society)」のメンバーだ。なぜ「逮捕=取り調べ」という実務を揺さぶろうとするのか。代表の高野隆弁護士に聞いた。

  • 黙秘権は「使えない武器」か 留置場から車いすで連行、異例の提訴へ

 ――会を設立した理由は

 黙秘権というものを、警察も検察もまったく尊重しないからです。

 終わらないじゃないですか、日本の取り調べって。黙秘権がネガティブな権利のように受け止められていて、「悪いやつが黙秘してるのを、あの手この手を使って口を割らせるのは当然だ」と。刑事がそれをどう崩すかが大事で、そのために聖職者みたいに説教をして、取り調べを続ける。

 実態が最近、世の中に知られるようになってきました。例えば(同じ第二東京弁護士会にいた)江口大和さんが黙秘権侵害を訴えた東京の訴訟では、検事が目を閉じて黙る江口さんを「ガキだよね」などと侮辱し続ける様子が取り調べ映像で明らかになりました。

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会見する江口大和さん(左から2番目)ら=2024年7月18日、東京・霞が関、米田優人撮影

 罵倒したり説教したり、高いところから人を見下したり、弁護人の悪口を言ったり。そういうことが、事実として伝わるようになった。

 黙秘している相手を取り調べるということが、いかに非人道的で、間違った正義なのか。しかもそれが逮捕・勾留中の最長23日間、毎日何時間も続くという先進国を、私は知らない。おかしいということを、改めて言う時期だと思いました。

バッシングを受けた30年前の活動

 ――実践している「取り調べ…

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