小学校に入学した子どもの預け先が見つからず、親が働きづらくなる「小1の壁」対策として、小学校の開門を早める動きが広がっている。放課後対策は学童保育などで進められてきたが、朝の時間帯は「盲点」だったとされる。全国的な広がりも期待されるが、課題もあるようだ。(三浦淳)
6月12日午前7時半ごろ、大阪府北部のベッドタウン、大阪府豊中市の市立大池小学校。
大阪市内の金融系の会社に勤める女性(38)が小走りで小1の女児(7)と登校してきた。
女性の勤務時間は午前8時半ごろから。「この時間帯に登校できなければ、時短勤務にしなければいけなかった。本当に助かっている」。女性は女児を見送ると、そばにある阪急豊中駅に急いだ。
大阪市内の金融系会社に勤める岡室舞さん(40)は小3の女児(8)を預けた。岡室さんも「二、三十分早く出社できるようになった分、仕事がはかどり、早く帰れ、娘と一緒にいる時間も増えた」と話す。
豊中市は4月から全39の市立小学校で開門時間を午前8時ごろから午前7時ごろに1時間早めた。これまでは、保護者の出勤に合わせて登校した児童が、校門前で100人ほど並ぶ学校もあったという。
登校した児童は、体育館や多目的室でトランプをしたり、タブレット端末に触れたりして自由時間を過ごす。安全を考慮し、ボール遊びは認めていない。
児童の見守りは、市教育委員会が民間の警備業者に委託し、1校に2人を配置。働き方改革が進む学校現場に負担をかけないようにしたといい、委託料は年間で約7100万円という。
市教委によると、取り組みから2カ月経った6月10日までの利用人数は延べ3154人で、1校当たりに換算すると1日平均2人弱だった。ゴールデンウィーク過ぎから利用者は増えつつあるが、「想定よりも少なかった」(市教委)。利用数がゼロだった学校も2校あったという。
利用が低調な理由として考えられるのが、保護者に求めている登校時の付き添いだ。市民から「通勤に使う駅と学校が全く逆の場合は不便ではないか」との声もあるという。
ただ、市教委学校施設管理課の桑田篤志課長は「子どもの安全を考えると、付き添いは必要で、親子のコミュニケーションの時間にもなる。イベントのように利用者が多ければいいというわけではなく、小1の壁に悩む保護者にとっての選択肢があることが大事だ」と強調。6月中に利用者らにアンケートを実施し、きめ細かなニーズを把握する方針だ。
同様の取り組みは、全国で広がりつつある。
神奈川県大磯町は2016年1月から町内の全2小学校の学童施設で午前7時15分から児童を預かっている。約2カ月半の県のモデル事業だったが、保護者らに好評で継続し、現在は2校とも1日平均で30人ほどが利用しているという。
広がる背景と課題は?
記事の後半では、朝の「小1の壁」対策が各地に広がっている背景と、課題をさぐります。
一方、県のモデル事業に参画…