「好きなことは徹底的に」。伊奈学生ならではの突破力で相撲界に入った前川=本人提供

【連載】高校思い出クリック~青春群像記~

高校をシリーズで紹介する企画。今回は埼玉県立伊奈学園総合高校の9回目です。

 両国国技館で開かれた大相撲1月場所は大関豊昇龍の逆転優勝で幕を閉じた。熱戦続きの館内に朗々と声を響かせていたのは伊奈学園総合高校(以下、伊奈学)の卒業生で、高砂部屋所属の十両呼出、邦夫こと前川邦朗(51、1992年卒)だ。オペラ歌手のような伸びのある声で、角界の中でも指折りの美声の持ち主と言われる。

 ソフトテニス部に入部したものの上にも下にも部員はいなかった。「同級生5、6人で楽しくやった」。相撲への興味は中学生からあった。中学3年の時は横綱千代の富士の連勝記録が続いており、「ますます相撲の世界に興味を持った」。

 伊奈学入学後、いてもたってもいられなくて「この人だったら話を聞いてくれるかも」と当時の若松親方(大関朝潮)に手紙を書いた。「一度遊びに来なさい」と親方から返事がきた。その縁で92年に相撲界に入門。2002年9月に十両呼び出しとなり「一人前」となった。

 しきたりと経験を重んじる厳…

共有
Exit mobile version