岡山県立岡山操山高校の2年男子生徒(当時16)が2012年、所属していた野球部の監督による激しい叱責(しっせき)が原因で自殺した問題で、県教育委員会が作成した再発防止策の案に対し、有識者から意見を聞く会合が8日、岡山市内で開かれた。取り組みの具体例が不十分といった厳しい指摘が多く、県教委は寄せられた意見をふまえ早急に修正案をまとめるとしている。
児童生徒の自殺防止と、起きた場合の初期対応などを示した県教委の再発防止策は六つの資料から構成。4月に外部識者に素案が示された。
京都精華大の住友剛専任教授(教育学)は、再発防止策をどのように学校現場に浸透させるのか、素案からは分からないと指摘。「県教委は現場から『教えて』と聞かれたら対応できるのか。準備はできるのか」と問うた。
大阪体育大の土屋裕睦教授(スポーツ心理学)は、防止策にある教職員向けの「体罰・不適切な指導・ハラスメント防止ハンドブック」を「少なくとも精読することを部活の担当者の条件に」と提案。また、「今回の件を事例として取り上げて教訓とすべきだ」と強調した。
ハンドブックについては、弁護士の渡辺徹氏も事例の記載が不十分だと指摘。「何が人権侵害にあたるかを明確に書いておかないと、人権感覚が弱い記述にみえる」と述べた。
防止策では、生徒や保護者が教職員による体罰やハラスメントに気付くための教育動画を作成するとしている。精神科医の田中究氏は「つまらない動画と判断されたら見てもらえない」とクギを刺した。
会合は一般傍聴が可能で、40人近くが会場を埋めた。県教委の担当者は「いただいた意見を具体的にどう反映させるかを早急に検討し、修正案を改めて示したい」とした。
再発防止策案には、遺族も76項目の意見を寄せている。男子生徒の父は終了後、「識者の指摘により、現在の案に多くの問題点があることが改めてわかった。県教委には保身ではなく、実効性のある防止策を期待したい」と話した。(小沢邦男)