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高さ12メートルのリングの上から、タイプAパビリオンの建設予定地を見る。施設らしき建築物は、ほとんどなかった。アルメニアもここでの着工を予定していた=2024年6月17日、大阪市此花区、佐藤慈子撮影
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 2025年大阪・関西万博の参加国などを対象にした「国際参加者会議(IPM)」が25~26日、奈良市で開かれ、約160の国・地域・機関が参加した。円滑なパビリオン運営のためのガイダンスなどが実施された一方で、各国が独自に設計・建設する「タイプA」パビリオンを断念する国が相次いでいる。そのうちの1カ国であるアルメニアの関係者に話を聞いた。

 「幻のパビリオンになってしまった。今まで積み上げてきたものがなくなってしまうという喪失感を感じた」。アルメニア館の設計を担当していた建築家の遠藤秀平さん(64)はこう語る。

 アルメニアは今月、タイプAの建設を断念し、協会の建物内に間借りしたスペースに出展する「タイプC」への変更を決めた。5月に起きた洪水被害の復興に予算を充てるためだという。

 もともとパビリオンの建設は遅れ気味だった。

 昨年11月、遠藤さんと契約を結んだものの、今年に入って万博担当の経済産業大臣が辞任。日本の建設会社と契約間近だったが、人手不足やコスト高などの理由で白紙になった。こうした困難を乗り越え、今月末にようやく着工するめどが立った矢先の変更だった。

 遠藤さんによると、建設業者との契約に難航していたのはアルメニアだけではないという。建設業界にも時間外労働の上限時間が適用される「2024年問題」で人手の確保が困難になっており、建設コストが上がったほか、建築資材も高騰している。

 実際、建物自体が展示物で「万博の華」と呼ばれるタイプAパビリオンは減り続けている。当初、60カ国が出展を予定していたが、19日時点で51カ国。ブラジルなど3カ国は、日本側がパビリオンを建て売りして工期短縮を図る「タイプX」に変更。ほか5カ国がタイプCに移った。

 遠藤さんはさらに高コストになる要因の一つとして、会場の立地を指摘する。万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)につながる道路は北東側の橋と南東側のトンネルの2本のみ。人や資材の搬送の効率が悪く、「立地が物理的なボトルネックになっている」。こうした事情を参加国が把握していなかったために、業者との契約が遅れた可能性があるという。

 「万博協会が各国に『遅れている』という通告をもっと早く出していれば、ここまで建設が遅れることはなかった」と遠藤さんは考える。

【動画】大阪・関西万博の参加国161カ国を対象にした国際参加者会議(IPM)が開かれた=佐藤慈子撮影

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