アジア・太平洋戦争の後、フランスが行ったBC級戦犯裁判「サイゴン裁判」で無期判決を受けた元陸軍大佐、増田栄一氏の手記など7冊が見つかった。戦犯裁判の中でもサイゴン裁判の実態の研究は進んでおらず、専門家は「裁判の当事者が残した貴重な記録」と評価している。
見つかった手記は、トイレットペーパーなどに記されていた。東京都日野市の元小学校教員の井上健さん(67)が読み取り、パソコンで文字に起こした。「八王子・昭和史の会」副代表も務める。
手記の存在を知ったのは2018年冬。三鷹市内の小学校に勤務していた時、同僚の教員から「BC級戦犯で無期刑になった祖父の手記が本家にある」と聞かされ、この同僚が数カ月後に手記7冊を持参した。消えかかった文字を1文字ずつ確認し、復元を終えたのは4年後の23年初頭だった。
同僚の祖父は、故・増田栄一氏。陸軍の将校で、1945年6月、当時のフランス領インドシナにあった「印度支那臨時俘虜収容所長」に就任した。敗戦後に開かれたフランスのBC級戦犯裁判で、収容所で十分な食料を与えなかった▽病気の捕虜への医療を拒否した▽部下の捕虜への虐待を黙認し多数を死に至らしめた――などとして起訴された。47年4月に無期刑を言い渡され、2度の減刑で53年6月に釈放された。
手記の一つは、判決後の48年9月1日~10月15日、ベトナム南部のプロコンドール島(現・コンソン島)の収容施設で書かれたもの。トイレットペーパーに鉛筆で日常生活が描かれていた。
〈昭和二十三(1948)年…