世界自然遺産に登録されている北海道斜里町の知床五湖で、外来種の園芸スイレンをロボットボートで除去する作業が13日から始まった。重機が入れず、人海戦術頼りの状況を好転させる「切り札」と期待されている。
ボートには幅約1.2メートルのバリカンのようなカッターがある。在来種が残るエリアを避け、GPSで事前に指定したルートに沿って自動で刈り取っていく。
ロボットを開発した東大大学院の海津裕准教授(生物・環境工学)は、これまでも宮城県の伊豆沼などで同様のボートを使い、ハスやヒシの刈り取りをしてきた。
知床五湖では約10年前から園芸スイレンが急増し始めたという。温暖化による水温上昇の影響とみられている。
水面が覆われると、水中の水草などが光合成を行えなくなる。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類のネムロコウホネや準絶滅危惧のオオタヌキモへの影響が心配されている。
知床五湖のうち、知床連山が水面に映る景観で知られる一湖について、海津准教授は「スイレンが密集していて茎も太く、刈り取りに難儀しそうだ」と説明する。
環境省はスイレンの除去を昨年から始めたが、刃物を使うとゴムボートに穴が開く恐れがあるため、ボートから身を乗り出して手で葉をちぎる重労働だった。
ロボットによる除去は8月下旬にも実施する。順調に進めば、約2ヘクタールの一湖の半分程度は除去できる見通し。
先月30日から始めた人力での除去も、8月下旬まで8回の作業を予定している。
除去作業を担当する環境省ウトロ自然保護官事務所の二神紀彦さんは「スイレンの除去は長期での取り組みになるが、このボートは切り札になる」と話した。