2022年5月、海面までつり上げられた「KAZUⅠ(カズワン)」=北海道の斜里町沖、朝日新聞社機から

 北海道・知床半島沖で2022年4月に観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没し、26人が死亡・行方不明となった事故で、第1管区海上保安本部は18日、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(61)を業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで逮捕した。

 2023年9月に公表された国土交通省運輸安全委員会の最終報告書などによると、カズワンは22年4月23日午前10時ごろ、斜里町のウトロ漁港を出港。知床岬で折り返した後、午後1時半ごろ、岬から南西約14キロの「カシュニの滝」付近で沈没した。

 これまでに乗客18人と、豊田徳幸船長(当時54)ら乗員2人の計20人の死亡が確認され、乗客6人の行方はいまだにわかっていない。

 事故当日は「風速が最大15メートル、波の高さが3メートル以上」になるとして、強風・波浪注意報が出ていた。

 知床遊覧船は、海上運送法に基づき国交省に提出した「安全管理規程」の運航基準で、「風速8メートル以上、波高1メートル以上」になる可能性がある場合は運航中止にすると定めていた。

 だが、「海が荒れれば戻る」という「条件付き運航」で出航した。委員会は、「(安全管理規程で定められた)運航基準に反するもの」と結論付けた。

 桂田社長は事故後に一度だけ開いた会見で、午前10時の出航の2時間前、カズワンの船長の豊田船長と打ち合わせし、条件付き運航を社長の判断で決めたと説明していた。

 同社の安全管理規程では、桂田社長は運航管理者になっていた。運航基準に沿って出航判断をする義務は一義的に船長にあるが、桂田社長には運航管理者として、航行の安全が確保されない場合は船長に運航中止を指示する義務があった。

共有
Exit mobile version