従来の「書」の概念を超えた前衛的な作風で知られる書家の石川九楊(きゅうよう)さん(79)の大規模な個展が東京で開かれている。書とは何か、言葉とは何かを問い続けた先に、現代美術にも通じる世界が広がっている。
縦3メートル近い大画面に、縦横に墨が走る。遠目には、戦後米国の抽象表現主義の大作絵画のようにも見える作品群が鑑賞者を包み込む。開催中の「石川九楊大全」展の後期「状況篇(へん)」の会場の中でも大空間の第2室では、こんな光景が広がる。
京都大法学部在学中に書と本格的に関わり始めた。第1室の1960~70年代の作品群は、石川さんが「書に疑問を持つようになり、書道といわれるものから脱出し、自分が書きたい、書かねばならない言葉をふさわしい姿にどう変えるかというスタート」とする時期に当たる。崩し文字のようなものも、谷川雁(がん)の詩が太い縦じまと交錯するかのような表現もある。
そして第2室が72~80年…