佐伯啓思の異論のススメ・スペシャル
9月27日の自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に決定した。ふりかえってみれば、今回の総裁選は、安倍派内部の不適切な政治資金処理からはじまり、やがて「政治とカネ」および「派閥」という自民党の体質が問われ、党改革や政治改革がひとつの論点となった。
その意味では、従来の派閥に属さずに自民党のなかで「異端」の立場にあった石破氏の当選も、この流れに乗ったものであろう。
石破氏が広く知られるようになったのは、1993年に政治改革法案に賛同して、自民党を離党したあたりからである。その後、自民党に復帰するが、90年代とは、ジャーナリズムや世論もふくめて、「改革」一色の時代であった。
自民党改革からはじまり、政治改革、行政改革、経済構造改革へと続く。「改革狂の時代」といいたくなるほどである。石破氏もこの流れのなかにいた。
世界中が急激な変化にさらされている時代にあっては、あらゆる領域で時代遅れの慣行や不都合な制度はでてくる。だから改革は当然だとしても、政治の中心的な場所で「改革」が叫ばれて30年というのはいささか異常であろう。
自民党の「保守」とは何なのか
ところが他方で、今回の自民党総裁選では、当初、多くの候補者が「保守」という言葉を使った。
確かに「自民党とは何か」と問えば、まずは「保守政党」である。では「保守とは何か」と問えばどうか。答えは決して容易ではない。しかも、平成に入って以降、「改革」の旗振り役が自民党であったとなれば、果たして自民党にとって保守とは何なのであろうか。
改めて振り返ると、自民党の…