厚生労働省

 アスベスト(石綿)関連工場で石綿肺を患った元労働者の男性の遺族が訴えた裁判で、国に約600万円の賠償を命じた大阪高裁判決に対し、国は2日、上告を断念したことを明らかにした。期限は1日までで国の敗訴が確定した。

  • 石綿肺の賠償めぐる起算点「国が無断で前倒し」 高裁が是正する判決

 20年で賠償請求権が消える「除斥」の起算点が争点。判決を受け、厚生労働省は石綿肺についてのみ、起算点を「被害の発症時」から「行政上の決定日」に運用を変更する。

 国は起算点を「被害の発症時」に早めて、請求権はないと主張していたが、大阪高裁は「行政の決定時」として請求権は消えていないと判断。一審・大阪地裁の判決を覆して、被害者側に約600万円を賠償するよう命じていた。

 上告断念について、厚生労働省石綿対策室は「慎重に検討し、関係省庁とも協議した」とコメントした。

 大阪高裁の判決では、じん肺について特異な進行性の疾患であり、長い年月をかけて初めて所見が見つかることも少なくない、などと指摘。じん肺の場合の損害賠償請求権の起算点は「行政上の決定を受けた時」と判断した。

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