レッツ・スタディー!小論文編 吉見純音さん②
自分の考えを論理的な文章にする小論文。近年の大学入試では思考力や表現力がより重視され、小論文を学ぶ意義が改めて注目されています。NMB48メンバーによる小論文を河合塾の講師に添削してもらい、文章表現の要点を探ります。高校2年生の吉見純音さん(17)が担当するシリーズの2回目です。(構成・阪本輝昭)
記事後半で、吉見さんのサイン色紙が抽選で当たるプレゼント企画の案内を掲載しています。ふるってご応募ください。
【お題】日本の硬貨、なぜ植物が描かれている?
日本の硬貨に共通して見られる特徴として、全てに植物が記されていることがあります。その理由を自由に推測してください。(200字以内)
【小論文】四季のある日本、硬貨にも… 吉見純音さん
四季のある日本。季節毎(ごと)に花が咲き、植物が芽吹き、作物が実る。日本硬貨に、植物が描かれている理由は、美しい四季の風景が日本を象徴するものだからだと、私は考えた。
先日、祖父母の家で稲刈りの手伝いの時に見た、黄金色に輝く風景。何度見ても圧巻で言葉を失ってしまう程の美しさだった。
これからも、この硬貨に描かれている四季の風景をずっと大切に、私達が守っていきたいと、小論文を書いてから一層強く思った。
【講評】吉見さんの感性を反映、新たな気づきも 論証強化に余地
河合塾の加賀健司講師による講評です。
初回では「吉見純音さんその人の感性をもっと反映させてもいいのでは」と注文をつけさせてもらいましたが、2回目は吉見さん自身の経験や美的感覚がしっかり盛り込まれ、より磨かれた文章になっています。オリジナリティーもあり、何より「吉見さんにしか書けない」内容なのが素晴らしい。
日本の美しい「四季」が硬貨のデザインに表現されているという分析も「なるほど」と思いました。例えば5円玉には「稲穂」が描かれています。まさに、吉見さんが稲刈りの手伝いをした際に圧倒されたという「黄金色に輝く風景」そのままの意匠であり、日本の「秋」をあらわすのにこれ以上適したデザインはないと思わされます。
ただ、少しもったいないのは、硬貨デザインと四季との関係を論証する実例が秋だけにとどまっている点です。
吉見さんの仮説に基づいて想像してみると、100円玉にあしらわれている桜の花は「春」を象徴しているものといえるでしょう。50円玉の「菊花」は秋の深まったころの時季を表しているといえるかもしれません。
吉見さんが初回で一番好きな硬貨として挙げてくれた1円玉はどうでしょうか。表に描かれている「若木」は普通に考えると新緑の季節、すなわち春から初夏ごろの図柄です。でも、この図柄は若木が芽を出すまでに過ごしてきた雪の下の長い時間をも想像させます。なので、個人的には「冬」の表現でもあるように感じられました。
このように、硬貨の図柄が映し出している季節についてあれこれ想像を巡らせるのはなかなか楽しい時間です。
この楽しさを「発見」させてくれた吉見さんの小論文は、読む人に気づきと新たな発想を提供したという点でも優れているといえます。まさに吉見さんの感性と観察力がそのまま小論文のもつ力となっているからです。
それだけに、論証と分析が四季全般にわたるものとなっていれば、さらに強い説得力をもっただろうという点だけが惜しまれます。第三段落を圧縮し、第二段落で論証をしっかり展開する方法もあったかも知れませんね。
最終回の第3回がいよいよ楽しみになってきました。
【感想】当たり前に存在するものほど壊れやすい 吉見純音さん
よしみ・あやね 2007年、兵庫県生まれ。愛称よしみん。昨年1月から活動しているNMB48の「9期生」。ピアノ、スケート、スキー、着付け、料理など特技多数。兼業農家をする祖父母の家で田植えや収穫の手伝いもする「農業アイドル」の一面も。
見渡す限りの稲穂が金色に輝く風景は、本当に息をのむほど美しく感じられます。
黄銅色の5円玉硬貨と、そこに描かれた稲穂のデザインは、秋という季節の雰囲気を見事に表現していると思います。
今年も9月中旬に祖父母の家へ行き、稲刈りを手伝いました。しゃがみ込んで一生懸命に刈り取っていると、トンボが何匹も悠々とあたりを飛び回っていたりして、思わずほっこりします。
でも、農家の人たちはここからがまだまだ大変です。脱穀、もみすり、精米。稲刈りから1カ月ほどして、祖父母の家から待ちに待った新米が届きました。
これが最大の楽しみです。新米でたいたご飯の豊かな味わいは、言葉では表現しきれません。おかずはシンプルに、卵焼きや納豆など。「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう!」と食事のたびに思います。
以前も書いた通り、私が季節の中で一番好きなのは「秋」です。様々な食べ物の収穫シーズンだし、ぎらぎらした夏が終わったあとの静かな風情がいいですよね。冬に向かってだんだん木々の色が変わり、気温も下がっていく。この季節にしかない雰囲気にどっぷりとつかり、夏の思い出にふけりながらおいしいものを食べるのが私の過ごし方です。
夏が長くなり、秋が短くなった?
ですが、最近、「秋」がどんどん短くなってきている気がしています。
夏が長くなり、9月になっても連日のように暑い日が続きます。10月に入ってやっと過ごしやすくなったと思ったら、あっという間に冬が来るというような。地球温暖化を巡る話題も最近よくニュースで見聞きします。
季節の変化は、植物の様相や自然の風景を鮮やかに塗り替えていきます。私の家の庭に生えているツツジもツバキも、アジサイもランも、季節ごとにまったく違った姿をみせてくれます。街の風景も、日ごとに移り変わっていきます。
その境目ごとに、人は「すべてのものは移り変わり、ずっと同じではいられない」「出会いには別れがあり、別れには出会いがある」という摂理を肌で感じるんだと思います。はかないものや繊細なものに心ひかれる日本人の感性も、四季によって育まれたものかも知れません。
アイドルにもある「四季」 大きな木に成長するために
アイドルという仕事も似ています。
なかなか思ったようにいかず、雪の下でじっと力をためこむ季節もあれば、積み重ねた努力が実って暖かな日差しを浴びる季節もある。そして、その先にまた新しい試練が待っていることもある。こうした激動の日々をつい季節のめぐりに置き換えて考えてしまうのも、やはり鮮やかな四季の中で生きているからなのかなと思うのです。その繰り返しのなかで、やがてアイドルとして大きな木に育ってゆけたらいいな、とも。
このように、四季は日本の美しい風土をつくるとともに、私たちの感性や考え方、生き方にも大きな影響を与えていると思います。
だからこそ、豊かな四季も自然も、変わらぬまま未来に受け継がれていってほしい。それを守っていくのは人間であり、私たちなのだ、というメッセージを私は硬貨のデザインから受け取りました。
当たり前に存在すると思われているものほど、案外壊れやすく、もろいものなのかも知れません。だから、その大切さというのは、ことあるごとに思い出せるといいんじゃないかなと思います。
そこまでたどりついて、日本の四季や自然を守っていく思いを最後の段落に書き込んだ結果、硬貨の図柄と季節との結びつきを論証するくだりが少し弱くなってしまいました。
「秋」と5円玉とのつながりを述べただけでは、論としての説得力が十分ではなかったなと思います。200字という制限の中で何を書き込み、何を短くするかの選択がいっそう大事なのだと改めて感じました。
次回がいよいよラスト。全てを出し切ります!
【とけるかな?】吉見さんのサイン色紙が抽選で当たります
ピアノが特技の吉見純音さん…