感情と経済的な意思決定の関係を研究した「行動経済学」の先駆けとして知られ、心理学者でありながら2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン米プリンストン大名誉教授が27日、死去した。90歳だった。同大が発表した。
1934年、リトアニア系ユダヤ人の家庭に生まれた。イスラエルのヘブライ大学で心理学を学び、のちに渡米。プリンストン大に長く在籍した。
経済学では長らく、人間は合理的に行動するという前提がとられていた。これに対し、カーネマン氏は心理学の要素を導入。損得勘定には非合理的な感情が重要な役割を果たすという「プロスペクト理論」を、共同研究者のエイモス・トベルスキー氏と提唱した。
プロスペクト理論の一つの例は、こうだ。①1万円を確実に得ることと、②50%の確率で2万円を得ることを比べると、多くの人は①を選ぶ。一方で、失う場合は②を選ぶ。どちらも期待値の「1万円」は同じだが、人間の選択は異なる。この理論は、医療や国際政治、スポーツなどさまざまな分野に大きな影響を与えた。
11年には著作「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」を出版し、世界各国でベストセラーとなった。21年には共著で「NOISE 組織はなぜ判断を誤るのか?」も出した。(ニューヨーク=真海喬生)