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Re:Ron連載「知らないのは罪ですかー申請主義の壁ー」第9回

  • 【前回はこちら】労働者を悩ます病気や介護 支援制度の利用、勤務先の後押しあれば

 「『自立支援医療制度』の存在を知るまで10年かかりました」

 これはてんかんを患っている、とある方の言葉です。

自立支援医療制度とは、心身の障害を取り除いたり、軽減したりするための医療費の一部の補助を受けられるものです。てんかんは、この制度の対象の病気でしたが、冒頭の発言をされた方が通院する病院からは、アナウンスがなかったといいます。

 制度の存在を知ったきっかけは、SNS(X、旧Twitter)上の医師による投稿でした。しかし、自分の病名が対象だと知った後も、身近に同じ病気の人がいなかったこともあり、本当に利用できるのか半信半疑だったといいます。

 転機となったのは、患者会への参加でした。

 患者会とは、同じ病気を抱える人々が集まり、日常生活の悩みや工夫、様々な情報を共有する場所です。セルフヘルプグループやピアサポートグループとも呼ばれ、多くは当事者によるボランティア団体やNPO法人が運営しています。

 この方は大学卒業後、就職のタイミングで患者会に参加しました。そこで、同じ病気の人が実際に自立支援医療制度を利用していることや、具体的な申請方法などを知りました。自分は病状がそこまで重くないから制度は利用できないだろうと誤解していたその方は、同病の方から具体的な情報を得ることを通して、てんかんの場合は発作の種類や重度を問わず、診断されたすべての患者が対象であることがわかったと言います。

 制度の詳しい情報に加え、同病の方々の体験談や後押しがあったからこそ、制度利用のイメージが具体化し、実際の利用に踏み切ることができたのです。

 この経験から、セルフヘルプグループが社会保障制度の情報を広めるだけでなく、すでに経験のある方の経験談やアドバイスが、制度利用をサポートする上で大切な役割を担っていると考えることができます。

筆者も参加した、小児がんのグループ

 今回は、セルフヘルプグループに焦点を当て、申請主義の壁に対してできることを考えてみたいと思います。

 セルフヘルプグループには…

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