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神戸・南京町の中心、南京町広場。「老祥記」前には豚饅頭を求める長い列ができ、あずまやも休む人でいっぱいだ=神戸市中央区
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現場へ! 変貌する中華街①

 8月末、神戸・南京町(神戸市中央区)。多彩な飲食店や雑貨店が軒を連ねる東西約270㍍、南北約110㍍の通りの十字路にある南京町広場では、豚饅頭(ぶたまんじゅう)発祥の店「老祥記」前に炎天下、観光客らの長い列ができていた。

 1日平均約1万3千個が売れる。「行列は申し訳ないが自家製の皮と具を手で包むので追いつかない」と3代目店主の曹英生(そうえいせい)さん(67)。先月まで21年間、南京町商店街振興組合の理事長を務めた。「僕が幼いころの南京町は治安が悪く人通りもまばらで、うちも木造のぼろぼろだった。1981年のポートピア博で北の異人館は注目されたが、南の南京町は怖いイメージが抜けなくて」

転機となった初の春節祭

 「南京さん」「南京人」はかつて日本で中華系渡来人を指した呼称で、住む町は南京町と呼ばれた。横浜は蔑称的として55年に中華街と改称したが、神戸は南京町を名乗り続け、それどころか2008年に「南京町」を商標登録。町のブランド化を進め、神戸市有数の人気観光地へと発展させた。変貌(へんぼう)への転換点になったのが、87年に開かれた町で初の春節祭だ。

 運営を担ったのは曹さんら組合青年部。そこに神戸商工会議所職員だった中野郁夫さん(69)が指南役で参加した。

 運営スタッフで数少ない、南京町外から来て中華にルーツも持たない日本人。開催のイロハを教示する立場で「プライドの高い華僑の青年らに受け入れられるか不安だった」。だが、杞憂(きゆう)だった。「己にない知識や経験を持つ相手に敬意をもって接し、貪欲(どんよく)に吸収する。偏見などみじんも感じなかった」。

 中華の龍舞の参考にと共に視察した「長崎くんち」の龍踊(じゃおどり)が、現地のオリジナルだと到着後に気付くなどの失敗も経て、春節祭は長さ40㍍の龍が舞い、3日で27万人を集める大成功。南京町は「なんや、安全で楽しい町やん」と見直され、曹さんら多くの青年部員はのちに町のリーダーに。「南京町」の面積を倍に広げ、豪華な観光用トイレも作るなどで現在のにぎわいを育て、春節祭は今年で36回を重ねた。

 彼らには「一つの共通項があった」と中野さんは言う。「多くは中国語、日本語に加え、中には英語も駆使する聡明(そうめい)な経営者や名店の後継ぎ。そして大半が、神戸中華同文学校の卒業生なのですよ」

友好に貢献する人材育成

 南京町から歩いて約20分…

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